御案内 雑記 小説 資料 休憩所 輪廻 大勢他集 本陣

「“箱庭を騙る檻の中で 禁断の海馬に手を加えて  驕れる無能な神にでも成った心算なの......”」 図書館の中に少女が二人。少女は一人の記憶を封印しようとしていた。 ??「ナぜ、なノ・・・?」 ??「・・・ごめんなさい。こんなことしかできなくて。」 “Love Wishing To The Ark” 少女の頬に一筋の涙が伝う。 少女は確かにもう一人の少女を愛していたのだ。 “崩壊 それは孕み続けた季節  二月の雪の日 『妹』の記憶” ことの起こりは些細なこと。 よくある関係の縺れ合い。。 そう、あれは雪の降る頃の話。 フランドール・ノーレッジの記憶。 「“我々を楽園へ導ける箱舟は”  そこは全ての知識が集うという図書館、 フランの姉であるパチュリーの図書館での話。 フランとパチュリーは共に喘息がちで体が弱かった。 特にフランは体が弱く、冬はいつも死と隣り合わせな状態だった。 パチュリー「やっぱり見つからないわ・・・あるとしたら種族を変えることかしら。」 フラン「だめ・・・、お姉ちゃんと一緒がいいから・・・ごほっ、ごほっ・・・・」 この姉妹はいつも一緒で仲が良い姉妹だった。 “哀れなる魂を大地から解き放つ” パチュリーには友人が二人いた。 一度フランが死にかけたときに助けてもらった恩人。 レミリア・スカーレット。 もう一人は魔法使いになろうとしている少女。 アリス。 レミリアはフランが死にかけていた時、パチュリーの作りだす賢者の石と交換で、 自身の血を使った薬でフランを助けたのだった。 だが、本人は一滴の血しか分け与えていないのでもう一つの方法を提示してきた。 レミリア「フラン、私の配下に成りなさい。」 パチュリー「だめよ!!いきなり吸血鬼になれだなんて!!」 レミリア「私はフランに聞いているのよ。賢者の石に対して一滴の血では釣り合わないわ。      フラン、貴方はどうしたいのかしら?」 フラン「わたしは・・・お姉ちゃんと一緒がいい・・・」 パチュリー「・・・!!」 レミリア「哀れね。苦しんでまでそのままで居ようとするのは。      私なら貴方の魂を地獄の苦しみから解き放つことができるのだけどね。」 パチュリー「確かに吸血鬼になることができれば、わたしたちの呪いによる       弱体は解けるかもしれない。       でも本人が望んでいないのなら無理にすることはないわ。」 “救いを求めるあなたにArkを与えよう”」 さらに時間は巻き戻り、 フランが死に瀕しているときのこと。 レミリア「吸血鬼の血が欲しいのかしら?本気で言っているの?」 パチュリー「そうよ。妹を助けるために、ね。       だからあなたには倒されてもらうわよ。」 しかし、吸血鬼相手に魔女とはいえ喘息の少女。敵う訳もない。 逆に吸血鬼といえど、流水や日の光を使った魔法で決定的なダメージは出せない。 レミリア「やるわね・・・」 パチュリー「くっ・・・」 フラン「お姉ちゃん!!ケハッ、カッ・・・」 レミリアもパチュリーもボロボロになり、フランももう持ちそうにはなかった。 しかし、 レミリア「・・・私の血ならあげてもいいわ。      ただし、貴方の持っている賢者の石と交換するなら。」 パチュリー「・・・ほんとうかしら?」 レミリア「これ以上戦ったところで無駄。      ならば両者にとってよい方法を選ぶべきね。」 レミリアはナイフを自分の手に軽く突き刺し、なぞる様にして皮膚を切り裂いた。 レミリア「さあ、これでいいでしょう?」 パチュリー「ありがとう・・・・」 そうしてパチュリーは血を受け取り、賢者の石を差し出した。 “≪Arkと呼ばれた物≫は月光を受けて輝いた......” 血は輝き、すでに調合していた薬に溶け・・・ パチュリー「フラン、これで楽になるわよ。」 フラン「ありがとう・・・お姉ちゃん・・・」 フランはその薬を飲み、眠った。 パチュリー「対価を渡したとはいえ、あなたは妹の命の恩人。感謝するわ。」 レミリア「やめなさい。本当は賢者の石なんてもらわなくても私の血ぐらいなら      彼女に幾らでも分けてあげたのだから。」 こうして、二人は出会った。 “思い出まで裏切った 冷たい言葉の雨” それから大分経った時のこと。 フランは苦しんでいた。 お姉ちゃんはもう一人の友達であるアリスと何かしているようで、 全然かまってくれなくなったのだ。 何時ものことなのだが、寂しく思っていた。 そんなとき、 フラン「お姉ちゃん、この本お姉ちゃんのしていることに役立たないかな?」 パチュリー「!!」 よほど集中していたのか、お姉ちゃんは驚いたみたいだった。 パチュリー「だめよ。これは私のやっていることなのだから、       あなたはかかわらなくていいのよ。」 フラン「せっかく役立つと思って持ってきたのに・・・」 パチュリー「・・・この本は・・・!!・・・フラン。       今後一切私のしていることにはかかわらないこと。わかったかしら。」 フラン「お姉・・・ちゃん?」 パチュリー「わかったなら出て行きなさい!!はやく!!」 フランには意味が分からなかった。 なんにしろ、お姉ちゃんは人が変わったように怒ったのだから。 今までこんなことはなかった。なにか原因があるはず・・・ そうすると思い当ることは一つだけだった。 “幸せだった二人 永遠に届かなくなる前に” これ以上このままにしているとまずい。 わたしたちはこのままだとおしまいだ。 そう思い動き出す。 そして刻々と時間は過ぎていく・・・ 「“ねえ何故変わってしまったの?あんなにも愛し合っていたのに...”」 パチュリー「誤解よ!!落ち着いて、フラン・・・」 フラン「でもっ!!お姉ちゃんはアリスに騙されてっ!!」 パチュリー「アリスは騙したりなんてしてないわ・・・わたしが騙したの。」 フラン「お姉ちゃんが騙したりするはずないよ・・・     ねえ・・・どうして変わってしまったの?」 パチュリー「わたしは変わってないわ・・・お願いだから落ち着いて、フラン・・・」 フラン「あんなにもお姉ちゃんのこと愛していたのに・・・ねえ・・     何故こんな小娘みたいなのに・・・・!!」 “涙を微笑みに変え詰め寄る≪Arkと呼ばれたもの≫を握って” フランは微笑みながら近づいた。 ≪Arkと呼ばれたもの≫を握って。 もう、止まれない。 パチュリー「フラン、やめてええええぇぇッッ!!!」 そうしてアリスを・・・・ ――――“愛憎の≪Ark≫ ・・・・・・ 「“さあ 楽園へ帰りましょう...お兄様”」 フラン「さあ 楽園へ帰ろう?お姉ちゃん」 “因果 それは手繰り寄せた糸  六月の雨の日『兄』の記憶” 結末、それは定められた運命。 そう、それは雨が降る日のこと。“姉”の記憶。 “信じていたその人に裏切られた少女” 信じていた姉に裏切られた少女は、 “逃げ込んだ楽園は信仰という狂気” 悪魔に囁かれ、姉を元に戻す手段を探していた。 フラン「お姉ちゃんはわたしがこんなだからあんなことになっちゃったんだ・・・     わたしの呪いさえなければ・・・」 “新しい世界へと羽ばたける自己暗示” ??「たしかに、あなたを救う方法をわたしは知っているわ。    こんなことになるのは本当は嫌なのだけど・・・」 フラン「お願い・・・なんでもするから・・・」 ??「そう、ならばしかたないわね。これは“貴女”が望んだことなのよ。」 “澄み渡る覚醒は進行という凶器” フラン「体が・・・軽い・・・!!これならお姉ちゃんを救い出せる・・・」 “最後の時に廻った 歪な愛の記憶” パチュリー「フラン・・・」 フラン「お姉ちゃん・・・」 “脆弱な精神が堪えきれず あの日嘘を吐いた...” パチュリー「あの子はわたしの罪なのよ。だから絶対にあなたには渡せない。」 フラン「死んでいるのに・・・?」 パチュリー「・・・」 フラン「わたしもお姉ちゃんの罪じゃないの・・・?」 パチュリー「それは違うわっ!!」 フラン「本当?」 パチュリー「・・・本当よ、フラン。」 フラン「嘘だっ!!だってお姉ちゃんは変わってしまった。     わたしの体が良くなってから・・・・」 パチュリー「・・・!!」 大きな破砕音。 気がつくとその場には業炎の爪跡が残っていた。 “律すれば律する程堕ちる 赦されぬ想いに灼かれながら” パチュリー「くっ・・・“水符 プリンセスウインディネ”!!」 水で炎を消そうとしたが炎の威力のほうが高くあっけなくかき消された。 それどころか増して炎は激しくなった。 炎に灼かれながら、少女は呟く。 フラン「愛しているわ・・・・お姉さま・・・だから。」 パチュリー「あああぁぁぁぁああっ!!!」 “まぐわう傷は深く甘く 破滅へといざなう...” フラン「お姉ちゃん・・・・お姉ちゃん・・」 パチュリー「ああっ・・ああああっ!!」 フラン「これでお姉ちゃんはわたしの物・・・」 一滴の涙。こぼしたのは誰なのだろう。 フラン「さあお姉ちゃん・・・」 “背徳の≪Ark≫” ―姉妹愛― 「“さあ 楽園へ帰りましょう...お兄様”」 フラン「さあ 楽園へ逝きましょう...お姉ちゃん」 “被験体#1096 通称『妹』 同じく”"Soror with the Ark" 妹 フラン 同じく         "Frandre with the Ark" “被験体#1076 通称『兄』を殺害”"Frater in the Dark" 姉 パチュリーを殺害       "Patchouli in the Dark" “〈症例番号(Case Number)12〉”"Soror with the Ark" 症例番号12           "Frandre with the Ark" “過剰投影型依存における袋小路の模型”" Frater..." 過剰投影型依存における袋小路の模型  "Patchouli..." “即ち≪虚妄型箱舟依存症候群≫(Ark)”"it's Dead" 即ち虚妄型箱舟依存症候群―Ark     "it's Dead" “限りなく同一へ近づける 追憶は狂気にも似た幻想” だんだんわたしと同じようになってきた。 まるで人形のように。 “求めるままに唇を奪いあい 少しずつ楽園を追われていく” 欲するままに唇を奪い、 居場所を奪われていく。 “同じ心的外傷(Trauma)重ねれば響きあう けれどそれ以上には...” 同じ病状、重ねれば響きあう。 だが、それ以上は・・・? 本当は姉妹でないなら・・・? 「“――箱庭を騙る檻の中で 禁断の海馬に手を加えて  驕れる無能な神にでも成った心算なの?”」か... フラン「・・・。箱庭を語る檻の中で、禁断の海馬に手を加えて     驕れる無能な神にでも成った心算なの?――――」 ・・・か。ふふ・・・ “在りし日に咲かせた花弁は 暗闇に散り逝くように凛と” 在りし日に残っていた“モノ”は 暗黒の中に凛と散り逝く。 “少女の声色で囁く「楽園へ帰りましょう」...” 少女の声色で囁く。 フラン「楽園へ帰りましょう」 “Love wishing to the Ark” 少女の頬に一筋の涙が伝う。 少女は確かにもう一人の少女を愛していたのだ。 “監視卿(Watcher)は天を仰ぎ深い溜息を吐く” ??「はあ・・・なんとか終わったのかしら・・・」 “失ったはずの≪左手の薬指≫が虚しく疼いた” ??「・・・。ふふ・・・おかしいわね。わたしがあんなことを思うだなんて。」 “―ふと彼が監視鏡(Monitor)の向こうへ視線を戻すと  嗚呼...いつの間にか少女の背後には『仮面の男』が立っていた――” ふと、彼女がその場所を再びのぞいた時には、 嗚呼、いつの間にか少女の背後には――が立っていた。

本を選びに戻る
もう一度読み直す