「“箱庭を騙る檻の中で 禁断の海馬に手を加えて 驕れる無能な神にでも成った心算なの......”」 図書館の中にわたしはいた。わたしは彼女の記憶を封印していた。 フラン「ナぜ、なノ・・・?」 パチュリー「・・・ごめんなさい。こんなことしかできなくて。」 フラン「・・・・・」 封印は終わり、落ち着いた。 フラン「もう大丈夫よ。」 ??「記憶が混ざっていたみたいね・・・・それだけじゃないけど・・・うっ・・」 パチュリー「大丈夫?!・・・ごめんなさい、わたしのせいで。巻き込んでしまって・・・」 ??「大丈夫よ。」 “Love Wishing To The Ark” フラン「ねえ、何故こうなっちゃったのかな・・・ わたしはもうあなたのことを思い出せない・・・」 パチュリー「・・・フラン。いえ、もうその名前で呼ぶことはないわね・・・ 妹様。・・・どうやっても生きるのよ。 こうなった以上はあなたはわたしのことを思い出せない。 でも、それでも生きるのよ・・・フラン」 わたしと少女の頬に一筋の涙が伝う。 わたしたちはは確かお互いを愛していたのだ。 わたしたちはは呟いた。 フラン・パチュリー「「また、ね。」」 “崩壊 それは孕み続けた季節 二月の雪の日 『妹』の記憶” ことの起こりは些細なこと。 よくある関係の縺れ合い。 そう、あれは雪の降る頃の話。 フラン・ノーレッジの記憶。 「“我々を楽園へ導ける箱舟は” わたしの図書館での話。 妹のフランはわたしと共に喘息がちで体が弱かった。 特にフランは体が弱く、冬はいつも死と隣り合わせな状態だった。 パチュリー「やっぱり見つからないわ・・・あるとしたら種族を変えることかしら。」 フラン「だめ・・・、お姉ちゃんと一緒がいいから・・・ごほっ、ごほっ・・・・」 わたしたちははいつも一緒で仲が良い姉妹だった。 “哀れなる魂を大地から解き放つ” わたしには友人が二人いた。 一度フランが死にかけたときに助けてもらった恩人。 レミリア・スカーレット。 もう一人は魔法使いになろうとしている少女。 アリス。 レミリアはフランが死にかけていた時、わたしの作りだす賢者の石と交換で、 自身の血を使った薬でフランを助けた。 そのころからの腐れ縁的な友人だった。 フランを助けるもう一つの方法を提示してきたのもレミリアだった。 レミリア「フラン、私の配下に成りなさい。」 パチュリー「だめよ!!いきなり吸血鬼になれだなんて!!」 レミリア「私はフランに聞いているのよ。賢者の石に対して一滴の血では釣り合わないわ。 フラン、貴方はどうしたいのかしら?」 フラン「わたしは・・・お姉ちゃんと一緒がいい・・・」 パチュリー「・・・!!」 レミリア「哀れね。苦しんでまでそのままで居ようとするのは。 私なら貴方の魂を地獄の苦しみから解き放つことができるのだけどね。」 パチュリー「確かに吸血鬼になることができれば、わたしたちの呪いによる 弱体は解けるかもしれない。 でも本人が望んでいないのなら無理にすることはないわ。」 でも、フランは望んでいないようだった。 その時は断ることができたのだ。フランがまだ元気だったから。 “救いを求めるあなたにArkを与えよう”」 時間は巻き戻り、フランが死に瀕しているときのこと。 レミリア「吸血鬼の血が欲しいのかしら?本気で言っているの?」 パチュリー「そうよ。妹を助けるために、ね。 だからあなたには倒されてもらうわよ。」 しかし、吸血鬼相手に敵う訳もない。 逆に吸血鬼といえど、流水や日の光を使った魔法で決定的なダメージ を食らうのを恐れ、完全にわたしを倒すことはできない。 レミリア「やるわね・・・」 パチュリー「くっ・・・」 フラン「お姉ちゃん!!ケハッ、カッ・・・」 わたしもレミリアもボロボロになり、フランももう持ちそうにはなかった。 しかし、 レミリア「・・・私の血ならあげてもいいわ。 ただし、貴方の持っている賢者の石と交換するなら。」 パチュリー「・・・ほんとうかしら?」 レミリア「これ以上戦ったところで無駄。 ならば両者にとってよい方法を選ぶべきね。」 レミリアはナイフを自分の手に軽く突き刺し、なぞる様にして皮膚を切り裂いた。 レミリア「さあ、これでいいでしょう?」 パチュリー「ありがとう・・・・」 そうしてわたしは血を受け取り、賢者の石を差し出した。 その時はまだ気付かなかったのだ。 フランにレミリアがそれを渡したことを。 “≪Arkと呼ばれた物≫は月光を受けて輝いた......” 血は輝き、すでに調合していた薬に溶け・・・ パチュリー「フラン、これで楽になるわよ。」 フラン「ありがとう・・・お姉ちゃん・・・」 フランはその薬を飲み、眠った。 パチュリー「対価を渡したとはいえ、あなたは妹の命の恩人。感謝するわ。」 レミリア「やめなさい。本当は賢者の石なんてもらわなくても私の血ぐらいなら 彼女に幾らでも分けてあげたのだから。」 こうして、二人は出会った。 “思い出まで裏切った 冷たい言葉の雨” それから大分経った時のこと。 わたしはもう一人の友人のアリスを魔女にするために、試行錯誤していた。 種族を変えるということは人間を作るのと同じようなことだ。 そのため禁忌を犯すのもやむなしだとわたしは考えていた。 だから、わたしだけでやる、そうきめていた。 アリスはそうは思っていなかったようだが、 禁忌を犯すことがどれほど危険か知らないからだろう。 そんなとき、 フラン「お姉ちゃん、この本お姉ちゃんのしていることに役立たないかな?」 パチュリー「!!」 フランがその手を赤く染めるのは嫌だった。だからわたしはこう言った。 パチュリー「だめよ。これは私のやっていることなのだから、 あなたはかかわらなくていいのよ。」 フラン「せっかく役立つと思って持ってきたのに・・・」 その本を見るとわたしは驚いた。生体を複製する方法が載っている本だったからだ。 パチュリー「・・・この本は・・・!!・・・フラン。 今後一切私のしていることにはかかわらないこと。わかったかしら。」 フラン「お姉・・・ちゃん?」 パチュリー「わかったなら出て行きなさい!!はやく!!」 フランは飛び出していった。 パチュリー「これで・・・よかったのよね・・・ さて、小悪魔。この本なんだけど、同系列の棚からあと二つぐらい 同じような本があるわ。それをとってきてくれる?」 小悪魔「わかりました。」 小悪魔は本を取りに行こうとした、が、わたしは少し気になることがあったので 聞いてみた。 パチュリー「ちょっと待って。レミリアのことを聞きたいのだけど。 最近なにかあったのかしら?」 小悪魔「・・・気づいてましたか・・・フラン様の話なのですが、 レミリア様曰くもう長くないと。」 パチュリー「嘘・・・。あんなに元気なのに。」 小悪魔「だから何度も言っておりますが、 フラン様を吸血鬼になさった方がいいかと・・・」 パチュリー「そんなこと絶対に駄目よ。こればっかりは譲れないわ。 そう伝えて。」 小悪魔「・・・分かりました。」 そうして小悪魔は立ち去った。 小悪魔「・・・わたしは・・・フラン様は生きるべきだと思います。 どんなに汚い手を使ったとしても。」 “幸せだった二人 永遠に届かなくなる前に” これ以上このままにしているとまずい。 フランの病状についてもっと調べていくとかなりまずい事に気がついた。 わたしたちはこのままだとおしまいだ。 そう思い動き出す。 そして刻々と時間は過ぎていく・・・ 小悪魔「パチュリー様、フラン様が呼んでいます。 二人のことで忙しいのは分かりますが、どうしますか?」 パチュリー「そのままのことを伝えておいて。」 小悪魔「わかりました。“そのまま”伝えます。」 何気ない一言。わたしにはわかっていなかったのだ。 彼女の仕組んだ罠を。 パチュリー「とりあえず、アリスの方を先に済ましてしまいましょう。」 そう、フランのほうは長年解決法を探し続け、そして何も見つからなかったが、 アリスの解決法はすでに分かっていたのだ。だからこれは当たり前のことだった。 読まれていたということも。 「“ねえ何故変わってしまったの?あんなにも愛し合っていたのに...”」 わたしは焦っていた。 パチュリー「誤解よ!!落ち着いて、フラン・・・」 フラン「でもっ!!お姉ちゃんはアリスに騙されてっ!!」 パチュリー「アリスは騙したりなんてしてないわ・・・わたしが騙したの。」 フラン「お姉ちゃんが騙したりするはずないよ・・・ ねえ・・・どうして変わってしまったの?」 パチュリー「わたしは変わってないわ・・・お願いだから落ち着いて、フラン・・・」 フラン「あんなにもお姉ちゃんのこと愛していたのに・・・ねえ・・ 何故こんな小娘みたいなのに・・・・!!」 フランは扉をぶち破り出て行った。 パチュリー「!!」 フランにはそんな怪力、なかったはずだ。 パチュリー「まさか・・・?」 アリス「パチュリー、準備はできているわ。」 パチュリー「・・・・まって、あなたを巻き込みたくない。 一年後にまた来なさい。」 アリス「馬鹿ね。わたしは最初からこうなることもわかっていて言っているのよ。 危険を承知の上でね。」 パチュリー「アリス・・・?」 アリス「見てなさい。わたしは二度と誰も不幸にはしないわ。 最後には・・・笑うのはみんなよ!!」 パチュリー「わかったわ。やりましょう。彼女のほうも同時にね。」 “涙を微笑みに変え詰め寄る≪Arkと呼ばれたもの≫を握って” パチュリー「アリス、いくわよ!!」 アリス「わかったわ。」 魔方陣を起動させた。もう戻れない。 パチュリー「月から日の七曜の魔女の元に命ずる。 汝は七色の魔女、アリスとなる・・・!!」 しかし邪魔が入った。ここまでは承知していたこと。 パチュリー「フラン・・・!!」 フラン「あーあ、お姉ちゃんはアリスと一緒になるつもりなんだ。 聞いたよ。お姉ちゃんの配下から。」 パチュリー「ふふ・・・かかったわね。“日符 ロイヤルフレア”!!」 日の光ががフランを焼き尽くす。わたしの予想ならそうなっていたはずだった。 だが、 フラン「そんなの、なんともないよ。」 フランは確かに日の光でダメージを負っていたが、それだけだった。 フランは微笑みながら近づいてきた。 レーヴァティンを握って。 もう、止まらない。 パチュリー「フラン、やめてええええぇぇッッ!!!」 そうしてアリスを・・・・ アリス「させないわ!!上海人形!!」 フラン「レーヴァティン!!つらぬいてっ!!!」 部屋が光で満ちた・・・・ アリス「あなた、やるじゃない・・・」 フラン「そっち・・こそ・・・あああああっ」 先に倒れたのは小さな体。 アリス「くっ・・・」 フランの体をレーザーが突き抜けていた。 一方アリスの体にはレーヴァティンが刺さっていた。 それ自体での傷は浅かった。 パチュリー「アリス!!契約の途中に魔力を使ったらどうなるか分からないと 言ったのに・・・!!」 アリスの体は少しづつ失われていった。 わたしはアリスに回復の魔法をかけていたが、 逆にアリスの体が失われていくだけだった。 パチュリー「しかたないわ・・・小悪魔、あれを持ってきてちょうだい。」 小悪魔「持ってきました。」 それはアリスの体と同じクローンだった。 パチュリー「魂が入ってないから使えると思うのだけど・・・ 一か八かね。 七曜の魔女が命じる。アリス・・・!!」 わたしは驚いた。アリスの体が既にアリスという名を拒んだことを。 アリス「やっぱり駄目・・みたいね。アリスという名はわたしの魔法とともに フランの体に入ってしまったわ。 新たな名をつけないと、どうしようもない。」 パチュリー「わかったわ・・・ 七曜の魔女が命じる! 汝、真名アリス・マーガトロイドは 七色の魔力をもつものとなることを!!」 アリスの体は消え去った。 パチュリー「これでよかったのかしら・・・」 アリス「これでよかったのよ。わたしはうっ・・・」 パチュリー「体が・・・すごい勢いで成長している・・・?!」 アリス「くっ・・・・」 パチュリー「とまった・・・?」 アリス「体が、魂の分だけ年をとったみたいね・・・」 パチュリー「どうする?服、破けちゃってるけど・・・・ はい、ガウン。」 アリス「ありがとう。そうね。 この件のお礼として、あなたに作ってもらおうかしら?」 パチュリー「わかったわ。」 アリス「そのまえに、フランを・・・」 ・・・ ――――“愛憎の≪Ark≫ フラン「愛してる。憎んでる。パチュリー。」 「“さあ 楽園へ帰りましょう...お兄様”」 パチュリー「さあ 楽園にもどりましょう?フラン、アリス。」 “因果 それは手繰り寄せた糸 六月の雨の日『兄』の記憶” 結末、それは定められた運命。 そう、それは雨が降る日のこと。パチュリー・ノーレッジの記憶。 “信じていたその人に裏切られた少女” これはあの日の前の六月 わたしは信じていたその人にに裏切られた。 いや、わたしが裏切ったのだろうか。 レミリア「・・・今まで黙っていたのだけど、言っておくわ。 あなたたちが呪われているようにわたしも呪われているのよ。 あの子に与えた血、それは魔術のかかった血。 わたしの母親がわたしにかけた魔法。 いつまでたっても、眷属を作らないわたしを心配してのことだろうけど、 必要ないのだというのに・・・。」 パチュリー「何故それをあのとき黙っていたの!!」 レミリア「大丈夫なはずよ。直接血を飲んでないから。 でも、一応言っておくわ。あの薬を何度も使うと・・・」 パチュリー「・・・わかったわ。忠告ありがとう。」 レミリア「わたしの血には、生が入っているわ。 気をつけることね。」 パチュリー「・・・・」 わたしは彼女の眼を見ることなくその場を立ち去った。 “逃げ込んだ楽園は信仰という狂気” 妹を元に戻す手段を探していた。 だが、見つからない。 逃げ込んだのは、友人の願いを叶えるという行為。 アリス「本当に手伝ってくれるのかしら?」 パチュリー「それぐらいはいつものことでしょう?」 アリス「・・・それならいいわ。」 そうして人種改造という禁忌に手を染めた。 “新しい世界へと羽ばたける自己暗示” レミリア「たしかに、あなたを救う方法をわたしは知っている。 でもあなたの答えは知っている。」 パチュリー「断るわ。残念だけど。」 レミリア「・・・これも運命ね。しかたないわ。 賢者の石は返さなくてはならないかしら?」 パチュリー「本をくれたし、呪われているとはいえ血をくれた。 それで十分対価として値するわ。」 レミリア「ふふ・・・ならば有り難く使わせてもらうわよ。 ああ、地下に材料があるわ。使いたいなら使いなさい。」 “澄み渡る覚醒は進行という凶器” パチュリー「これだけあれば十分ね。」 アリス「あとは、エリクシールを作るだけ。ようやく魔女になれるのね。 確か材料は賢者の石だったかしら?」 パチュリー「あれを作れるのはわたしだけよ。材料は・・・」 ・・・そして、次の日。 パチュリー「エリクシールができたわ・・・・ふぅ・・・」 わたしは疲労で倒れてしまった。 よくは分からなかったが、アリスが看病してくれていたようだ。 フランも心配してくれたことは覚えている。 だが具体的なことは覚えていない。 あの時に気づいていれば、こんなことは起こらなかったのだ。 わたしは二人のことばかり気にしていて自分のことを見ず、 周りを見ていなかったのだ。 “最後の時に廻った 歪な愛の記憶” そして決壊は唐突に訪れた。 パチュリー「フラン・・・」 フラン「お姉ちゃん・・・」 パチュリー「どうしてなの・・・?今までこんなことなかったのに。」 フランは夏だというのに唐突に倒れた。 だが、生憎アリスのことで手が込んでいたので二人同時に見なくてはならなかった。 フラン「お姉ちゃん、くるしい・・よ・・・」 アリス「わたしのことはいいわ。フランを助けなさい。」 パチュリー「無理よ。すでに契約の一部をかわしている。 このままフランを助けるには魔力が足りないわ。」 アリス「なら、わたしの契約を破棄するべきよ。」 パチュリー「そんなことしたらあなたの魔力がうし・・・!!」 アリス「・・・んっ」 パチュリー「どうし・・・て?」 アリスはパチュリーの唇を奪っていた。 そしてわたしが魔力を吸われたということに気がついたころにはもう遅く、 アリス「・・・はぁあああああっ!!」 フラン「アリスお姉ちゃん・・・!?」 アリスは自分の魔力もろともフランに注ぎ込み、フランの命を助けた。 “脆弱な精神が堪えきれず あの日嘘を吐いた...” パチュリー「あの子はわたしの罪なのよ。だから絶対にあなたには渡せない。」 フラン「死んででるのに・・・?」 パチュリー「・・・」 フラン「わたしもお姉ちゃんの罪じゃないの・・・?」 パチュリー「それは違うわっ!!」 フラン「本当?」 パチュリー「・・・本当よ、フラン。」 フラン「嘘だっ!!だってお姉ちゃんは変わってしまった。 わたしの体が良くなってから・・・・」 確かに、わたしはあの時のことに罪悪感を感じていた。 だが、今までどうりのはずだったのだ・・・・そう・・・・ パチュリー「・・・!!」 大きな破砕音。 気がつくとその場には業炎の爪跡が残っていた。 “律すれば律する程堕ちる 赦されぬ想いに灼かれながら” パチュリー「くっ・・・“水符 プリンセスウインディネ”!!」 水で炎を消そうとしたが炎の威力のほうが高くあっけなくかき消された。 それどころか増して炎は激しくなった。 炎に灼かれながら、少女は呟く。 フラン「愛しているわ・・・・お姉さま・・・だから。」 パチュリー「あああぁぁぁぁああっ!!!」 だが、炎はやはり消えてしまった。 アリス「はぁ・・・はぁ・・・・姉妹・・ゲンカなんてするものじゃないわよ。」 パチュリー「アリス!!動いちゃだめよ!!」 フラン「おねえさ・・・ま・・・どうして・・・」 パチュリー「どうして、どうしてなの・・・ わたしはみんなにただ生きていてほしいだけなのに・・・」 “まぐわう傷は深く甘く 破滅へといざなう...” 全ての物が嘆き悲しむ。罪悪感に心を犯され、壊れてしまいそうだ。 フラン「お姉ちゃん・・・・お姉ちゃん・・」 パチュリー「ああっ・・ああああっ!!」 アリス「パチュリー。妹は大切にしなさい。」 一滴の涙。こぼしたのは誰なのだろう。 フラン「さあお姉ちゃん・・・」 もう、終わりだ。そう思ったとたん何かがプツンと切れた。 パチュリー「レミリア・・・・!!」 気がつくとアリスもフランもいなかった。 わたしはベットの上で寝ていた。 レミリア「わたしに用があるらしいわね。」 パチュリー「わたしと一つになりなさい。そして。」 “背徳の≪Ark≫” ―姉妹愛― 「“さあ 楽園へ帰りましょう...お兄様”」 パチュリー「さあ 楽園へ逝きましょう...レミィ」 “被験体#1096 通称『妹』 同じく”"Soror with the Ark" パチュリー 同じく "Patchouli with the Ark" “被験体#1076 通称『兄』を殺害”"Frater in the Dark" アリス フラン レミリア を殺害 "Alice , Frater and Remilia in the Dark" “〈症例番号(Case Number)12〉”"Soror with the Ark" 症例番号12 "Patchouli with the Ark" “過剰投影型依存における袋小路の模型”" Frater..." 過剰投影型依存における袋小路の模型 "Alice , Frater and Remilia..." “即ち≪虚妄型箱舟依存症候群≫(Ark)”"it's Dead" 即ち虚妄型箱舟依存症候群―Ark "it's Dead" “限りなく同一へ近づける 追憶は狂気にも似た幻想” だんだん彼女はわたし同じ姿になっていく。 まるで弄ばれる人形のように。 “求めるままに唇を奪いあい 少しずつ楽園を追われていく” 欲するままに唇を奪い、 居場所を奪われていく。 “同じ心的外傷(Trauma)重ねれば響きあう けれどそれ以上には...” 同じ病状、重ねれば響きあう。 だが、それ以上は・・・? 本当は姉妹でないなら・・・? 「“――箱庭を騙る檻の中で 禁断の海馬に手を加えて 驕れる無能な神にでも成った心算なの?”」か... パチュリー「・・・箱庭を語る檻の中で、禁断の海場に手を加えて 驕れる無能な神にでも成った心算なの?レミィ。」 わたしは酔ったようにふらふらと彼女を問い詰めていた。 レミリア「・・・・か。」 “在りし日に咲かせた花弁は 暗闇に散り逝くように凛と” パチュリー「“月符 サイレントセレナ”」 レミリア「“紅符 不浄夜レッド”」 わたしの知らないスペルだった。近距離のスペカを持っているとは知らなかったが、 どちらにしろ終わりだ。 パチュリー「二枚目よ。“日符 ロイヤルフレア” ・・・そして。“日月符 ロイヤルダイヤモンドリング”!!」 レミリア「甘いわ。“神槍 グングニル”!!」 パチュリー「!!」 すんでのところでかわし、そしてわたしの攻撃は直撃した。 “少女の声色で囁く「楽園へ帰りましょう」...” パチュリー「楽園へ還りましょう?レミィ。」 “Love wishing to the Ark” ああ、なんて愛おしいこの世界だろう。 “監視卿(Watcher)は天を仰ぎ深い溜息を吐く” ??「どうやら成功したみたいです。 パチュリー様もレミリア様も無事ですし。」 ことを見守っていて疲れたのかため息をついた。 “失ったはずの≪左手の薬指≫が虚しく疼いた” レミリア「これで、おあいこよ。 わたしがあんたにもらったものは失ってしまったわ。」 アリス「フランは無事よ。ただ、記憶はわたしとレミリアと元の記憶が混ざって なくなってしまったわ。」 レミリア「わたしの血を使って治療したはずよね。 なら、わたしの記憶は残ってるはずよ。」 アリス「だ、そうよ。パチュリー」 パチュリー「あなたたちの茶番だったというの?」 アリス「そうともいうけど、わたしは自分のために動いただけ。 それが結果的にこうなっただけよ。 あなたたちを救うことがわたしの為になる。 あなたたちはわたしにとって大切な人だから。」 “―ふと彼が監視鏡(Monitor)の向こうへ視線を戻すと 嗚呼...いつの間にか少女の背後には『仮面の男』が立っていた――” ??「良かった・・フラン様。・・・・?」 パチュリー「でも、こんな事件を起こしたからにはここにはもう居れないわね。」 アリス「わたしの知り合いのところに来るかしら?」 パチュリー「どうやら、その必要はないみたい。」 その女は隣の部屋にいるフランの後ろに立っていた。 レミィの開けた穴を通り、こちらに近づいてきた。 ??「初めましての方は初めまして。ごきげんよう。」 ここで終わっている。
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