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夢幻の囁き

二人の悪魔の創りし世界。 それが夢幻世界。薄暗い月明かりの中、そんな中に二人。 悪魔の一人、夢月はどうしたわけか、机に突っ伏していた。 夢月:・・・はぁ、うまく書けないわ。こういうものなのかしらね・・・ なにかを書いているようだ。しかしうまく書けないのか、何度も消して、 書きなおしている。 その姿を背後からこっそり近寄る影が・・・ 幻月:なーに書いているの? 夢月:わっ!!もう、姉さんったら・・・きゅうに出て来ないでよ、驚くじゃない。 幻月:別にいいじゃない〜姉妹なんだから。 夢月がむすっとしているのを傍目に幻月は微笑んだ。 だが、急に表情を変え、幻月はふたたび話し出した。 幻月:それより、また壊れたわ・・・ 夢月:そう・・・やっぱりわたしたちと違っていずれ壊れてしまうのね・・・ 幻月:本当、脆いんだから・・・どうしてこの世界を創ったのかな。    わたしたちは・・・ 夢月:姉さん、やけに弱気ね。 幻月:しょうがないじゃない。わたしたちには壊れたものを直せても、    魂を呼び戻してその人に再び戻すことは難しいもの。    全てを永遠に生き続けさせることは不可能。 夢月:確かにそうね。でも、死ぬからこそ美しいのよ。 幻月:わたしにはわからないわ。その人の魂は永久にその人の魂で    あり続けるべきなのに。 夢月:それは理想。出来ないからこそ、わたしたちが見ているのよ。    せめて安らかに眠れるように。 幻月:・・・ 夢月:じゃあ、わたしはもう出かけるわね。彼らの旅を見送るために。 そう言うと、急ぎ足で立ち去った。 扉のしまる音。静寂。 しばらく突っ立っていた幻月は部屋の中を見まわし、ため息をついた。 幻月:あら・・・?机の上に何かが置いてある。 それは夢月の書いていた手紙だった。 幻月:なに、なに・・・? その手紙には一言だけ、こう書かれていた。 『Dear my sister 幻月  ずっと、一緒だよ。  by your little sister 夢月』 幻月:!! その手紙がどういうものなのか、理解した時には幻月は部屋から飛び出していた。 幻月:二人で一つ・・・ずっと忘れていたわ・・・    悲しい時も。嬉しい時も・・・    あのときもそう・・・ 一人の悪魔は目にもとまらぬ速さである場所を目指した。 一方、夢月は夢幻世界にある花畑で魂を送りだしていた。 夢月:・・・わたしだって泣きたいわよ。    さぁ、お別れね。・・・また縁があれば、会いましょう? 魂は、夢幻世界との別れを惜しむように、しかし確実にあるべき場所へ 帰って行った。 静寂。 夢月の頬に一筋の銀の煌めきが伝う。 その瞬間、花びらが舞いあがった。 夢月:姉さん?! 幻月:なにも、言わないで。 そう言うと、幻月は夢月の頬に伝う雫を受け止めた。 夢月:!! 夢月の頬に残る柔らかな感触。 幻月:手紙のお返しよ。 そう言うと悪魔は悪戯っぽく笑った。 夢月:そう、じゃあそれのお返しね。 二人の悪魔は抱きしめ合い、互いの唇でそっと触れあった。 幻月:わたしは大切なことを忘れていた。    わたしたちはそういうものだということを。    もう、永遠に傷つきつずけることも厭わない・・・ 夢月:だって、姉さんにはわたしが、わたしには姉さんがいるものね。 幻月:そうね〜。さあ、そろそろ帰りましょう。 二人の悪魔。 彼女たちの世界はまだ、続く。 二人の思いを乗せて。 戻る キヨナガさんへ愛をこめて。 by羽島蓮奈