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秋におくる豊穣神の話

秋も深まり、山はすっかり赤く染まっているころ・・・ 穣子:姉さん、準備できてる? 静葉:大丈夫よ。今日は収穫感謝祭。忘れてないわ。 穣子:うん。そうだよね。はあ・・・ 静葉:どうしたの? 穣子:村の大人たちはわたしを崇めるだけで、わたしは完璧だと思ってるから、    それを思い出したら、ちょっと気が重くなっただけ。 静葉:・・・ 穣子:それじゃあ、夜に向けて、会場の準備でも手伝いに行きましょ? 静葉:そうね。 山を降り、ふもとの村の会場・・・中心の広間に来た。 そこでは老若男女村の全ての人が収穫したものを運んでいた。 よく見まわすと、人形が大きなカボチャを持ち上げて運んでいる・・・ 穣子:・・・?あれは何? ??:わたしが人形に手伝わせているのよ。 穣子:そうなの?すごいわね。 ??:あなたは、神様なんだから少しぐらい威厳を持ちなさいよ・・・ 穣子:あれ、わたしがいつ自分が神様といったかしら? ??:村の人から聞いたのよ。豊穣の神様、秋穣子。わたしはアリス・マーガトロイド。    よろしく。 穣子:あ、うん、よろしく。ところであなた、人間・・・じゃないようだけど、    どうしてこんなことを手伝ってるの? アリス:わたしも元人間だから習慣になってるのよ。それに、村長さんに手伝ってほしいと     頼まれたからね。 穣子:もしかしてあなたって、頼まれると断れないタイプ? アリス:・・・うるさいわね・・・ 穣子:あら、ごめんなさい。 アリス:はぁ・・・そのせいで何かと厄介事に巻き込まれやすいのだけどね・・ 穣子:そうだったんだ・・・ アリス:それより、あなたたち、来たことを村長さんに知らせたのかしら?     あなたのお姉さんが待ってるみたいだけど。 穣子:まだ来たばかりだから、今から行こうと思ってたの。それじゃ、また。 そうして、集会場のほうへ歩いて行った。 アリス:あの二人が秋の神・・・ね・・ ふとアリスが二人のほうを見ると、姉の静葉がこっちを向いて小さくお辞儀をしていた。 それは一瞬のことで、次の瞬間には二人は集会場に向かって歩いているだけだった。 アリス:・・・?今のは何だったのかしら。 しかし、少し疑問に思っただけで、アリスはまた作業に戻った。 広間を抜けて少しのところに集会場はあった。そこで事務的な作業をする人が、 集まって明日のスケジュール管理などをしていた。 穣子:村長さんはいますかー? 大きな声できくと、一人の年をとった人間が出てきた。 村長:おお、今年も来てくださったか。有難うございます。 と一礼して、 村長:あなた方には去年と同じく、収穫したものを奉らさせていただきます。    そして翌日にそれらで料理を皆にふるまうこととなりますが、よろしいでしょうか? 穣子:構わないわ。だけど、わたしたちにも手伝わせてくれるかしら? 村長:そんな滅相もない!!誰かがさぼっていたのですか? 穣子:ちがうわ。わたしが単に手伝いたいだけなのよ。 村長:・・・そういうなら・・・かまいませんが・・・ 穣子:ありがとう。 村長:いえ、あなた方のお願いですので。 穣子:静葉、いくよ。 村長は広場のほうへ再び戻っていく二人を見送りながら頭を下げていた。 静葉:案外うまくいったね。断られると思ったけど。 穣子:こうでもしないと暇で仕方がないのよ。実りを手に入れるのには自分から進んで    行動しなくちゃいけないのに。神だからって、全て他の人にやらせるのは    おかしいわよ。 静葉:でも、そういうふうにしているから、村の人が寄ってこないのよ。    少しは人との付き合い方を覚えたほうがいいわよ。 穣子:だからって、自分を見上げてる人と対等な関係を持つことはできないわよ。    はぁ・・・こどもはいいのだけどね。 そういっている間に二人は広間に到着した。 静葉:さて、南瓜でも運びましょう?そろそろ南瓜に細工するでしょうし。 穣子:そうね。 そうして、南瓜を運び出すことになった。 収穫した野菜や果物などは村の外れの倉庫にまとめておいてあり、それを運んでくる。 それらを豊穣神への捧げものとしているのだ。 南瓜の一部はジャック・オ・ランタンとして、村の様々な場所に飾られる。 そのため村では大量の南瓜を倉庫から運んできていた。 穣子:よいしょっと・・・結構中身が詰まってるわね。 静葉:本当ね。 静葉が南瓜をたたくと、ポン、ポン、と音が反響した。 穣子:いい音ねー。これならすごくおいしそう。夜が楽しみだわ。 静葉:夜はみんなに配るお菓子でしょう? 穣子:そうそう。南瓜とか芋とかで作るのよね。    明日の朝、解体して作る御馳走も楽しみだけど。 と、倉庫から南瓜を運んで広間に戻ってきた。 ふと、周りを見回すと、ついさっき見たような人影を見つけた。 アリス:あら、また会ったわね。 穣子:本当ね。ところであなたは明日の朝の炊き出しには参加するのかしら? アリス:丁度迷っているところなのよ・・・家にいる悪魔がうるさいからね。     本当はいきたいところなのだけど。 というと、なにかがいきなり出てきて、 ??:別に私はいいわよ〜。私も参加すればいいだけだし。 ??:姉さんがそういうなら私もいいわよ。 静葉:!! ??:あら・・・? アリス:あなたたちも来ていたなら手伝ってくれないかしら?そうすれば助かるのだけど。     幻月に夢月。 幻月:なんで?嫌よ私。そんな重労働しなくちゃいけないなんて。 夢月:わたしもそういうのは苦手だからいいわ。 アリス:はぁ・・・やっぱりそうよね・・・ 穣子:夜の仮装パーティに参加するの? 幻月:そうよ。 アリス:炊き出しに参加するから家には戻らないわよ? 幻月:ええー・・・?! 夢月:姉さん、無茶は言わないのよ。 幻月:わかってるけど・・・ アリス:・・・はぁ。しかたないわね。あなたたちも泊まれるよう頼んでみるわ。 静葉:頼むって、もしかして集会場に泊まるのかしら? アリス:でもこれでもこの子たち世界の創造神なんだけど泊めてくれるかしら・・・ 穣子:わたしたちが頼んだらなんとかなるかもしれないから、頼んでみるわ。 アリス:本当?有難う。 幻月:あらら?本当にいいの? 穣子:それぐらい別に何ともないし、丁度どこかに泊まろうと思っていたところだったからね。 夢月:有難う。 幻月:うーん、じゃあ何かお返しをしないといけないわね。何がいい? 穣子:じゃあ、明日の炊き出しをとても面白くしてくれるかしら? 幻月:あら?炊き出しを“手伝う”じゃなくて? 静葉:あなたにそれを頼んでも手伝わないでしょう? 夢月:確かに姉さんなら断ってるわ。 幻月:えー?そう? アリス:違うの? 幻月:違わないけど・・・ 夢月:お邪魔しちゃ悪いから、夜にまた来るね。 幻月:夢月もずいぶん馴染んだわね。 夢月:う、うるさいわよ。姉さん! 幻月:ふふふ。じゃあ、またねーアリスと秋の神様。 来た時と同じように瞬く間に帰って行った。 アリス:と、話している間に全部運び終わったみたいね。 穣子:じゃあ、南瓜を彫ってジャック・オ・ランタンを作りましょう? 静葉:・・・そうね。 アリス:・・・? 穣子:よし、南瓜に穴を開けて・・・ いうがはやいか、南瓜に穴を開け、中身を繰り出した。 静葉:中身は使わないから、後で肥料にするそうよ。 アリス:わたしも庭の花陽に肥料をもらうから、少し残しておいてちょうだい。 穣子:はーい。 もくもくと、中身を掘り、そして、皮を切り、形を整え、 穣子:うーん、口があまりうまくできないわ・・・ アリス:どれかしら?・・・そこはこうして・・・ 穣子:有難う。あなたって手が器用なのね。 アリス:職業柄よ。人形術師だから。 静葉:・・・できたわ。 穣子:う、やっぱり上手・・・ 静葉:そんなことないと思うけど・・・穣子のもうまくできてるじゃない?ねえ? アリス:わたしもそう思うわ。 穣子:でも手伝ってもらったし・・・ アリス:それでも自分で作ったものよ。だから自信を持ちなさい。 穣子:そうだね。じゃあ、次作ろう? アリス:そうね。 静葉は再び二人から少し離れた場所で、南瓜を掘り始めた。 静葉:・・・いるの? 夢月:あらら?どうしてかしら・・・ 静葉:季節の神をしているだけではないのよ。それは置いといて、あの二人の衣装がほしいのだけど。    今日のハロウィン用にね。 夢月:アリスはあのままの恰好でいいって言ってたから家にも置いてないと思うけど? 静葉:違うわ。作るのよ。 幻月:呼んだかしら? 夢月:誰も呼んでないわよ・・・ 幻月:えーえー? 静葉:とりあえず、あの二人のうち、アリスの衣装を作ってほしいの。 幻月:それは“契約”? 静葉:ただの、“願い事”よ。 幻月:代償は何なのかしら? 静葉:お菓子よ。――悪戯をお願いするの。 幻月:あなた、面白いわね。気に入ったわ。 静葉:そうかしら? 夢月:姉さんを楽しませることができたのは今までほとんどいなかったわよ。    あなたは、不思議な感じがするもの。 静葉:そうね・・・。でもそれは今は関係ないわ。 幻月:わかったわ。アリスに仮装させればいいのでしょう?もちろんやるわよ!! 夢月:姉さん、本当はやりたかったの? 幻月:ベ、別にそんなんじゃないわ。 静葉:あなたたちも面白いわね。 幻月:どういたしまして。 静葉:じゃあ、頼んだわよ。 幻月:任されたわ。 そうこうやり取りをしている間、アリスと穣子は黙々と南瓜を彫って次々と南瓜の 飾りを完成させていった。 穣子:うーん、できたわ。 アリス:これぐらいでいいかしらね。 静葉:そうね。これは後で村の人が飾ってくれるそうだから、広場の中央までもって    いきましょう。 三人はたくさんの南瓜を抱え、中央の場所に持っていく。 穣子:うー、持ちづらい・・ すると、持ち方が悪かったのか、一つの南瓜を落としそうになり・・・・ 穣子:うわっ・・・ アリス:!! 地面に接触する前にアリスの人形がキャッチした。 穣子:ありがと・・・助かったわ。 アリス:いいのよ。でも無理に持たないほうがいいわよ。     無理しすぎると逆に運ぶのが遅くなるから、わたしが運ぶわ。 穣子:助かるわ。ありがとう。 そうして全ての南瓜を運び終えた。 アリス:やること終わったし休憩してくるわね。じゃあ、また夜に会いましょ。 穣子:またねー 静葉:お疲れ様。 アリス:あ、穣子?夜用のお菓子、もう作ってる?     よかったら今日一緒に作らない? 穣子:いいの?もちろんいくわ!姉さんはどうする? 静葉:・・・わたしはいいわ。夢幻姉妹と話があるから。 夢月:・・・え? 穣子:あー、今夜の話? 静葉:そう。後で話すわ。 穣子:ん〜、じゃあ、アリス、行きましょ〜? アリス:ちょっと心配だけど・・・幻月たちをよろしくね? そういうとアリスと穣子は村から出て行った。 幻月:・・・で、用って何なのかしら?手短に頼むわよ? 夢月:くだらないことじゃないでしょうね? 静葉:今日は村で泊っていってくれないかしら?たぶん妹もアリスに    言ってるはずよ。 幻月:アリスが・・・なら泊るわ。 夢月:・・・姉さんが泊るなら・・・ 静葉:ありがとう。・・・で、二人の衣装は決めたのかしら? 夢月:あなたはそのまま? 静葉:この服のままがいいのだけど・・・ 幻月:じゃあ、ちょっと豪華にしてみましょうか? と、幻月は指を鳴らした。 その瞬間、静葉は光に包まれ、 静葉:・・・なにかしら・・・これ。 頭の上にわっかが出た。 幻月:天使。はい、これスピアー。 どこから取り出したのか先が細長い三角になっている槍を放り投げた。 静葉:・・・なんなの・・・これ・・・?こうすればいいのかしら? 見事にキャッチすると、手首を返す要領で槍を回転させつつ体に沿わせ振り回した。 夢月:慣れてるわね・・・ 静葉:・・・まぁ、ね。で、あなたたちの衣装は? 槍を背にしながら二人の顔を覗き込む。 幻月:悪魔、よ。 夢月:・・・メイド。 静葉:・・・そのままじゃない。 幻月:わたしは羽が黒くなるのよ!! 静葉:夢月は変わらないじゃない? 夢月:冥土の土産に・・・ 幻月:メイドの悪魔だわっ!ってこと。もちろん黒い羽。 静葉:あの二人の衣装は、どうするの? 夢月:アリスにはヴァンパイアが似合うと思うわ。    かっこいいもの。 幻月:えー?夢月もアリスに? 夢月:って姉さん、ち、違うわよ!!    ・・・で、穣子には和服のお姫様の衣装。 幻月:着替えはわたしたちに任せて。    だ、か、ら、追加でtrick or treat! 静葉:お菓子ならあるわよ。はい。 と、どこからか、もみじまんじゅうを取り出した。 夢月:・・・用意がいいわね。 幻月:うー・・・美味しいけどうー・・・ 時は過ぎ、日も暮れてきた。 村には灯が灯り始め、祭りの賑やかな中・・・ 幻月:むー・・・アリスたちはまだ? 夢月:じきに来るわよ。 仮装し終わった三人は村の入り口で二人を待っていた。 静葉:来たわよ。 アリス:おまたせー。 いつも通りの少女が、手にかごを下げ空から降ってきた。 穣子:ハァ、ハァ、速いわよ・・・ と、これまたかごを持って降りてきた。 アリス:ほら、お菓子持ってきたわよ。はい。 と、それぞれにお菓子を配っていった。 穣子:わたしの分もあるわよ〜。 静葉:これで十分よね。 幻月:じゅーぶん。 アリス:・・・ていうかあんたたちのその格好は・・・何? 夢月:何って仮装よ。 幻月:そうだ、あなたたちも着替える?えいっ! 二人は光に包まれ、 アリス:・・・ヴァンパイア? 穣子:すごく似合ってる・・・ 幻月:うん、かっこいいわ!! アリス:あんたの趣味・・・穣子は、お姫様ね。     似合ってるわよ。 穣子:うーん・・・なんか照れるな〜・・・ 静葉:そろそろ行くわよ。わたしたちがいないと祭りは始まらないでしょう? 穣子:はぁ・・・またやらなきゃいけないのね・・・ アリス:そういえば、毎年やってるらしいわね。豊穣に感謝するため、だったかし     ら? 穣子:そうなんだけど・・・何だか崇められているだけでまったく相手にされて    いないというか・・・そういうのが嫌なのよねー・・・ アリス:あなた・・・・ハァ、目が悪いわよ・・・気が付いていないの・・・? 穣子:なんのこと? アリス:・・・気づいていないならいいわ。多分後で気づくでしょうし。     ささ、行きましょ? 夢月:・・・ 村長:おお、これは穣子様お待ちしておりました。 中央の広場の端には、祭りの櫓が組んであり、広場付近は多くの屋台が出ていた。 村長:ささ、櫓にお上がり下さい、穣子様。皆心待ちにしています。 穣子:わかったわ。じゃ、みんな待っててね。 そういって櫓の裏にまわっていった。 夢月:じゃあ、わたしたちは広場で待っておきましょう。 幻月:そうねー。でも、人が多い場所だと、アリスモテモテで困るんじゃない? アリス:ないない・・・ 静葉:そうでもないと思うのだけど。 アリス:まったく、みんなして・・・そろそろ始まるわよ。 櫓の上には穣子が椅子に座っていた。 村長:さて、今年も今日という日を迎えられたことを有り難く思います。    穣子様の挨拶を以て収穫祭を始めさせていただきます。    では穣子様、前へ。 そう言われ、穣子は前に出た。 穣子:えー、皆様、こんばんは。 挨拶をすると、広場はざわめいた。 村男A:うわー可愛い・・・。 村男B:いや、かっこいいな。あの和服のセンスは素晴らしい。     って、神様のファッションチェックなんてしていいのか・・・? 村女A:この世界で上も何もないと思うんだけど?ほら、話始まるわよ? 穣子:今年も皆さんの信仰のおかげで、沢山の実りを得ることが出来ました。    皆さんの信仰に感謝をして、此処に収穫祭りの始まりとします。 そう言って一礼した。 村長:では、皆様、祭りを楽しんでください。 穣子:あー・・・疲れ・・・へぇっ?! 穣子は素っ頓狂な声をあげた。 アリス:あ・・・穣子・・・ アリスは沢山の女子に囲まれていた。 アリス:ちょっと待ってね。 村女B:待って下さい・・・アリス様ぁ! 村女C:かっこいい・・・ アリスが動こうとすると沢山の人がついてくる。 静葉:・・・さっきからこんな感じで動けないのよ。    って穣子? 村男A:あ、穣子様だ!! 村男B:いや、様つけるべきか?もっと親しみやすく、みのりんとかにした方がい     いような・・・ 村男A:うーむ、そうか?穣子様はどう思う? 穣子:へっ? 子供A:お姉ちゃん!trick or treat! 穣子:はい、お菓子。うーん、流石にみのりんって呼ばれるのは恥ずかしいかも。    穣子、ならいいけど。 子供A:わーい、ありがと!! 村男A:じゃあ穣子、さん。(・・・傍で見ても美しい・・・・) 静葉:穣子まで・・・・ 静葉が呆れていると、幻月が笑いだした。 幻月:ふふふ・・・・穣子?アリスと二人で逃げなさい? 穣子:えっ? 幻月:夢月、やるわよ? 夢月:姉さん、わかったわ。 そう言うや否や、幻月は飛びあがり穣子に襲いかかった。 穣子:へっ??きゃあっ!! いきなりの出来事に可愛い悲鳴を上げる。 穣子:ちょっと?なに?! 幻月:この子の命が惜しけりゃぁ・・・・わたしたちから離れな。 凶悪な魔力を放ちながら、村人を威嚇する。 村男B:ちょっと、何やってるのか分かってるのか?! 幻月:ええ、わかってるわよ、十分すぎるほどにね。 アリス:ちょっと何をやってるのよ!?へっ? 夢月:後ろががら空きよ。アリス。 そう言って夢月はアリスに急接近する。 夢月:避けなさい。姉さんから奪い返して二人で逃げるのよ。 アリスにしか聞こえないようそうつぶやいた。 アリス:・・・そういうこと。じゃあ、覚悟しなさい。 アリスは華麗に夢月の切裂く攻撃を避け、瞬時に幻月に接近した。 幻月:この子はわたしがもらっていく。ふはははははっ!! アリス:待ちなさい!! 村女A:うわ、すっご。サプライズイベント? 幻月:ふ、ヴァンパイアごときがわたしの攻撃をかわせるかね?! アリス:ってえ?!ええええええ!!! 幻月の凶悪な弾幕が放たれる。何とかかわしていくアリス。 穣子:アリス!!このっ! 幻月:しまった!! 思いっきり暴れたせいで幻月はバランスを崩し、 アリス:穣子はわたしがもらっていくわ。じゃ。 幻月:まて!! 静葉:足元がお留守よ。 いつの間にか背後にまわっていた静葉が足払いを放つ。 幻月:なにっ! バランスを崩しているすきにアリスたちは建物の屋根に飛び移り、遠くに逃げて 行った。 村女B:さすがアリス様ぁ・・・・かっこよすぎる!! 静葉:わたしが相手よ。悪魔。 幻月:夢月!追えっ!! すさまじい魔力、神力がその場を支配する。 村男B:くっ・・・なんて力・・・ 静葉:一瞬で終わらせるわ。終焉―秋の悲壮 静葉が宣言し、同時に 幻月:くらいなっ!! 幻月の手から極太レーザーが襲いかかった、が、 静葉:無駄よ。 静葉の手前でレーザーは消え、押し返されていく。 幻月:く・・・何故?!! 一瞬でレーザーは全て消えてしまった。 静葉:終わりよ。あんたの馬鹿な発想はこれで最後ね。 思いっきり加速し、殴った。 幻月:ぐ・・・ ばたん、という音とともに幻月は思いっきり倒れ、 静葉:ありがとうございました。 幻月:こんなもんよ〜。あ、カーテンコールはないわよ? 村男A:演技だったのかよ!! 幻月:さて、わたしたちも屋台でも回りましょ〜 静葉:そうね。 村男B:すごいな・・・ アリス:まいたわね・・・ 夢月:そうね。 穣子:そうねって・・・・目の前にいるじゃない?! 夢月:ああ、あれは逃げるための演技よ。 アリス:まあ、あのまま動けなかったからいいじゃない。     じゃあ、せっかくのお祭りだから屋台でも回りましょ? 穣子:むぅ・・・ 夢月:それに、わかったでしょう。あなたが思っているようには距離は遠くない    のよ。 穣子:・・・じゃあ、あんたはどうなの? 夢月:・・・ アリス:・・・・創造神の心。創ったもののにどう接するべきか、なんて誰にも     分からないわよ。でもね、夢月。わたしは穣子の考えていることが正しい     と思うわ。 穣子:・・・死、種族の差、そんなものは関係ない。・・・あの子たちの笑顔    からそう思ったの。 夢月:・・・そうね。わたしが教えるはずが、逆に教えてもらったわね。    全く。まだまだ半人前ね・・・・ 穣子:じゃ、綿飴でも買いましょ?此処のはふわふわしてておいしいよー。 夢月:わ、わたしは綿飴なんて・・・ アリス:はいはい、あんたにも買ってあげるわよ。 夢月:・・・うぐぅ。 穣子:ふふふ。 一方幻月たちは、林檎飴を買いなめていた。 幻月:やっぱりお祭りといえば、林檎飴よねー。    美味しいかどうかにかかわらず! 静葉:焼きそばも美味しいわよ。 幻月:あ、たい焼き屋さん!! 村人D:へい、なに味にするかい? 幻月:じゃあ、わたしは粒あん〜 静葉:わたしは抹茶で。 村人D:はいよっ、今温めるからちょっと待ちな。 幻月:そう言えば、なんであんたはそんな力を持ってるの? 静葉:昔取ったなんとやらよ。・・・ライバルがいたのよ。    とんでもなく強くて、優秀で、有名。    何度挑んでも勝てなかった。まぁ、昔のこと。    彼女からはいろいろ教わったわ・・・・ 幻月:へーそうなの。あ、たい焼きできたみたいね。 村人D:へいお待ち。あんたたちは美人だねぇ・・・ちょっとおまけして     クリーム味も入れとくよ。 幻月:ありがと。 静葉:ありがとうございます。 村人D:いいってことよ。 ??:あ、すみません。たい焼き、こしあん一つ。 村人D:へい毎度! 幻月:!! 静葉:!! ??:あぁ?・・・わたしの顔に何かついてんの? 静葉:違うわ。あなた・・・いったい・・・ ??:ああ。わたしか?わたしは九浄紅。旅人だ。    たまに魔力でビビられるがな。隠しきれなかったかー。 幻月:とんでもないわねー。 紅:あんたたち、連れのやつらはどうした? 幻月:へ? 紅:いただろ?わたしは知ってる。 静葉:人が集まり過ぎたから二手に分かれたわ。 紅:そっか。んじゃ、まぁお互い、祭りを楽しみましょーか。じゃあまたね。 幻月:バイバーイ。 静葉:さよなら。 そうしているうちに、夜は更けていった。 アリス:いえいえ。穣子〜こっちよー。 穣子:待って、アリス。 入ったところは畳の敷き詰められた和室。 静葉:広いわね・・・ここでみんなで寝るのかしら。 幻月:そういうことになるわね。 夢月:じゃあ、布団はわたしが敷いておくわ。 幻月:あ、わたしも手伝うわよ。 アリス:じゃあ、みんなで敷きましょ。 そうして布団を敷き終わった。 穣子:よいしょ・・・これでいいのかな? 夢月:ちょっとトイレに行ってくるわ。 静葉:・・・ アリス:じゃあ、先に寝てるわねー。おやすみ。 夢月:・・・ 静葉:何してるの。 紅:まったく、わたしは何もしないよ?おっと、静葉。後は頼んだよ。 夢月:ちょっと待ちなさい。静葉にはわからないでしょ。姉さんを見ていて・・・・ 静葉:・・・はぁ。わたしが分からないとでも?    終焉。悲しみ。わたしはそれを知らないとでも? 夢月:な、なにを? 静葉は夢月をいきなり抱き締めた。 静葉:じっとしてなさい。 夢月:・・・!これは・・・あなたの記憶・・・・? 静葉:わかったでしょう。・・・こんなことがあろうとわたしはここにいるわ。 夢月:・・・ 静葉:あなたも大丈夫よ。・・・そうだ。明日の朝、祭りの後の炊き出しがあるの    だけど手伝ってくれないかしら。 夢月:・・・わかったわ。 静葉:邪魔して悪かったわね。おやすみ。 夢月:おやすみ。 日が昇り、光が差し始めるころ。 夢月:姉さん、いくわよ。 幻月:はい、そーれ、そーれ。 静葉:二人とも、ありがと。 夢月は大きな鍋の上に浮かび、二層洗濯機弾幕を放った。 静葉:いくわよ。 南瓜を丸ごと投げる。 南瓜は鍋の上で見事に実だけ鍋に入る。 幻月:そーれ、そーれ。 そして宙に浮かんだままの皮に幻月がレーザーを当てはじき出す。 静葉:これぐらいでいいわ。 そうこうしているうちにかぼちゃスープが出来上がった。 幻月:こんなもの、ちょちょいのちょいよ。 夢月:わたしたち姉妹にかかれば、ね。 静葉:頼もしいわね。 村女A:ああ、助かったわ。 と、静葉は少しはにかんだ。 紅:ああ、お疲れ様。っと、向こうも来たようだよ。わたしはこれで。 アリス:ふぁー・・・おはよ。ああ、炊き出しの準備ね。 幻月:もう出来上がったわよ。 穣子:何時の間に?! 幻月:じゃあ、みんないただきましょー。 村女A:はい、じゃあこれあなたたちの分ね。 と炊き出しの料理のセットを渡していった。 一同:いただきます。 アリス:美味しいわね。これも実りの神のおかげかしら? 穣子:もう、アリスったら。冗談はよしてよ。 夢月:正論。 穣子:夢月まで・・・・ 静葉:食べ終わったら、アリス、ちょっと来てくれるかしら? アリス:ん・・・?なにかしら。 静葉:村の外の裏山の手前で待っているわ。 アリス:来たわよ。 静葉:昨日は一日ありがとう・・・穣子を頼むわ。 アリス:いったいなにを・・・? 静葉:あの子はちょっともろいから。 アリス:・・・・大丈夫よ。 静葉:・・・ アリス:それよりあなたも、わたしと友だちにならない? 静葉:え・・・!?・・・ありがと。 小声で顔を赤くしつぶやく。 アリス:・・・どうしてこういうタイプがわたしの周りには多いのかしら。 静葉:・・・? ああ、あなたに渡したいものがあるのよ。 手を紅葉が綺麗な山に向け手を伸ばす。 まるで紅葉の綺麗な錦のような山々をつかみ取るように。 アリス:・・・!! 静葉:・・・今はこんなことだけしかできないけど。 アリス:十分よ!!これであなたたちの人形を作るわ。     ・・・・完成したら二人で見に来てね。 山を彩る錦の生地。 アリス:きっと、素晴らしいものになるから。 静葉:・・・そうね。これからも、素晴らしいことが待っている。 穣子:ふたりともー?どこ行ってたの?みんな待ってるよー? 静葉:待たせると悪いから、戻りましょう。 アリス:ふふ・・そうね。 穣子:まったくもう・・・姉さんったら油断がならないんだから。 夢月:はぁ・・・空気を読むのは大変ね。 幻月:・・・楽しいじゃない。 五人の後ろには、太陽が燦々と輝いていた。 戻る